
唯一無二のオリジナルファブリック
F/CE.®が国内屈指のダウンファクトリーNANGAに別注を依頼するエクスクルーシブライン。その全貌を解き明かすインタビュー企画として、NANGA代表である横田智之氏とF/CE.®のクリエイティブディレクターである山根敏史、それぞれの視点からプロジェクトの意義やプロダクトのディテールについて語ってきた。
いよいよ最終回となる今回の題材は、NANGAとのダウンウェアに用いられているファブリック。2018 FWシーズンでは、独自に開発されたオリジナルファブリックを採用。その機能の特徴をもとに、F/CE.®のプロダクトにおけるファッションとアウトドア要素のバランスを明かしていく。
Photo : Shouta Kikuchi
Text&Edit : Shota Kato
Special Thanks : Yoko Hoshino
都市と自然の往復にふさわしいファブリック
F/CE.® 2018 FWコレクションにおいて、アイテムに使用されているファブリックのほとんどがブランドオリジナルとして開発されたものだ。F/CE.®のコレクションアイテムは、まずテーマとなる国とコンセプトを決めたうえで、それにもとづいたプロダクトを製作されてゆく。2018 FWシーズンのコレクションモチーフはフランスと”OLD NEW SCHOOL”。そこからインスピレーションを受けて開発されたファブリックは、今季のF/CE.®を語る上では必要不可欠な要素となっている。
では、F/CE.®とNANGAのコラボレーションダウンウェア、そのすべてに採用されているFLIGHT(エフライト)というハイスペックのオリジナルファブリックを例に、生地について解説していこう。
FLIGHTの特徴はまず、NYLON66 20dという細い加工糸を使用したリップストップ生地であるということ。ミリタリーの定番素材であるリップストップは、ハードな動きに耐えられる強靭なタフさで知られる。しかしながら、FLIGHTには密度が細かいタイプの糸を選定しているため、生地自体にミリタリー素材特有の無骨な印象がなく、洗練された雰囲気を纏っている。
その他には、耐水圧20,000mm、透湿性20,000g/sm/24hoursというハイエンドレインウェアと同様の高い透湿防水性を実現。さらに、通常よりも糸を多く捻ることで伸縮性を高めたメカニカルストレッチ素材を採用し、ソフトで滑らかな風合いと、より快適な着心地を実現することに成功した。言い換えるとFLIGHTは、都市生活はもちろんのこと、自然環境で過ごすための機能を追求したファブリックなのだ。タウンユースとアウトドアユースの関係について、F/CE.®のクリエイティブディレクターである山根敏史はどう捉えているのだろうか。
「今季のNANGAとのダウンウェアはトレッキングやハイキングにも対応できるスペックに仕上がりました。軽量性・透湿防水性・伸縮性などに優れているだけでなく、ジッパーをはじめとする資材もプロユースなアウトドアウェアと遜色のないものを選んでいるんです」
豊富なジッパーを取り揃えるYKKのラインナップの中から、もっとも衝撃に強いものをセレクト。また、脇のベンチレーションのメッシュにはアウトラストという糸で編んだメッシュ生地を採用している。アウトラストはNASA公認の高機能素材であり、いかなる環境下でも人が心地よいと感じる肌温度32℃〜33℃にコントロールしてくれるという機能を持つ。さらに、プロダクトの裏地には袖通しと滑りの良いスパン糸を使った生地を採用。さまざまなディテールから快適な着心地を追求していることがわかるだろう。
「僕らがデザインするのは、あくまでも街で着ることを念頭に置いた洋服。そこに寝袋メーカーとして始まったNANGAが極上の暖かさをもたらしてくれる。そうやって、このダウンシリーズには、それぞれが追い求めているものの特徴が表されているんです」
ファブリックそのものはアウトドアシーンでの使用を想定しながらも、デザインやシルエットは洗練された印象と快適なフィッティングを重視。F/CE.®とNANGAが追求するデザインと機能、その結晶として生まれたものこそ、都市と自然を行き来するためのリアルクローズに他ならない。